韓国大法院判決の履行を求める要請書

2020年7月29日

日本製鉄株式会社

代表取締役社長 橋本 英二 様

強制動員問題解決と過去清算のための共同行動
日本製鉄元徴用工裁判を支援する会
(連絡先 横浜市鶴見区豊岡町20-9 全造船関東地協気付)

一昨年10月30日、韓国大法院は元徴用工被害者4名に対する損害賠償を命じる判決を確定させました。しかし判決と同時に日本政府は日韓条約でこの問題は解決済みであるとして貴社に判決に従わないように圧力をかけました。そして貴社もこの圧力に屈して今回の株主総会においても「当社は日韓両国間の外交交渉の状況等も踏まえ適切に対応」すると言いながら判決を履行しようとしていません。そして韓国の大邱地裁浦項支部が現在差し押えられている貴社の保有するPNRの株式売却の公示送達を決定したことにより8月4日以降に「現金化」される事態が迫っています。

 

 

日本政府は韓国政府が国際法に違反していると主張していますが、そもそも条約解釈が各国の行政府と司法とで判断が別れることはしばしばみられることです。今回の判決は日本政府と韓国の司法との間で日韓請求権協定の解釈に相違が生じたということに過ぎません。まず貴社は損害賠償をめぐる韓国国内法に基づく民事訴訟において韓国の最高裁にあたる大法院まで争って敗訴したという事実を認めなければなりません。

 

韓国大法院は元徴用工の「慰謝料請求権」は条約の対象外であるとして会社の重大な不法行為(元徴用工被害者に対する人権侵害)に対する被害者の請求権を認めました。日本の司法も強制労働=不法行為責任について請求は棄却しましたが事実認定をしました。日本国内では法的責任を免れましたが責任が消えたわけではありません。また今回の判決が確定した原告以外にも賠償を求めている被害者がいることも忘れてはなりません。

 

 

貴社はその企業行動規範に「1法令・規則を遵守し、高い倫理観をもって行動します」「8各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行います」を掲げています。世界各国には様々な社会的規範、文化、慣習がありその尊重なくして企業としてグローバル展開はできないということでこの行動規範を定めたのではないのでしょうか。貴社は自ら掲げる企業行動規範との矛盾について説明責任を果たしていません。

 

 

また貴社が日本政府の「解決済」論に組みし判決を履行しないため、昨年日本政府が大法院判決に対する実質的な「経済制裁」を韓国に対して行った際に日本製品の不買運動や日本への旅行自粛などの事態を招き全国各地で深刻な影響が出ました。このことに対する貴社の責任も重大です。

 

企業は法令を遵守(コンプライアンス)することによってその社会的責任(CSR)を果たすことができます。日本を代表するグローバル企業として日韓関係の修復のためにも下記項目について誠実な対応を強く求めます。

 

 

 

 

1 株式が「現金化」される前に大法院判決を自主的に履行すること

 

2 強制動員問題の解決に向け、被害者、代理人、支援団体との間に協議の場を設けること

以上

ダウンロード
20200729日鉄判決履行要請書.pdf
PDFファイル 100.6 KB