事務局からの集会報告
2022年11月30日開催〈院内集会〉
被害者が生きているうちに解決を!
今こそ謝り、つぐなうとき
強制動員問題解決と過去清算のための共同行動事務局
11月30日、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動は衆議院第一議員会館で院内集会「被害者が生きているうちに解決を!今こそ謝り、つぐなうとき」を開催しました。
「徴用工」問題をめぐって日韓両政府は、「早期に問題解決を図る」ことで一致し、外交協議を重ねています。ただ、日本政府はこの間の尹錫悦政権の対応を評価しつつも、なお「解決済み」論に固執するかのような態度をとっています。
このような中で、この集会は今こそ解決すべき時であることを確認しあうとともに、どのような解決が求められているのか、を様々な分野でご活躍の方がた、国会議員、メディア、市民の方がたとともに考えていくべく開催しました。
討論には、外村大さん(東京大学教授)、中沢けいさん(小説家・法政大学教授)、東郷和彦さん(元外交官)、五味洋治さん(東京新聞論説委員)、鳥井一平さん(移住者と連帯する全国ネットワーク代表理事)、平野啓一郎(小説家)さんにご参加いただき、それぞれのお立場から強制動員問題を解決すべきとのご意見、貴重なご提案などをいただきました。
集会には4名の国会議員の方々に出席いただき、挨拶していただきました。議員ご本人が国会審議等でご出席が叶わなかった議員のうち4議員からはメッセージをいただき、或いは秘書の方にご参加いただくことができました。
集会にご参加いただいたすべての方がたに改めてお礼を申し上げます。
また、この院内集会に向けて作家の髙村薫さんからメッセージ「日韓の棘を抜くために」をお寄せいただきました。髙村さんは、『サンデー毎日』(2019年2月3日号)のコラム「サンデー時評」(2019.2.3)で、「こじれる日韓 和解の道探る責務」と題し、2018年韓国大法院判決に対する日本政府の対応について論評されました。その中では、「日本は法理上、個人の請求権について裁判沙汰にする権能を認めていないが、請求権自体は韓国と同様に有るとしているのだ。そうだとすれば、日韓には被害者救済のために歩み寄る余地はあるはず」と書かれました。そして、「日本は人権が重視されるいまの時代にふさわしい和解の道を探る責務も負っている。かつて鹿島建設や西松建設にできたことが、新日鉄にできないわけもあるまい」と新日鉄に「自発的な対応」を促されていました。髙村さんは今回のメッセージでも、「元徴用工問題が、解決に向けて少しでも前進しますように」と願われ、「債務者側の自発的な対応を」を呼びかけられました。日本政府、関係企業にも届けたいメッセージでした。
この集会にご参加いただけなかった皆さまには、以下簡単に集会の内容等について報告させていただきます。集会の模様については録画し、それをYouTubeで配信しています。このYouTubeにもアクセスしていただきましたら幸いです。https://www.youtube.com/watch?v=nE2bQ4F_LrY
主催者の基調報告
集会の冒頭に主催者は基調報告を提起しました。その中では、日韓政府間協議で強制動員問題を早期に解決することで一致していることを踏まえ、日本側が「解決済み」論に固執するのではなく、韓国側に「誠意ある呼応」をすべきと主張しました。その「誠意ある呼応」とは、日本の企業の謝罪と、「財団」(基金)への出資ですが、1965年以降の日本の歴代政権が、朝鮮植民地支配に対し繰り返し反省と謝罪を表明し、過去の強制連行訴訟において企業が和解し、被害者に金銭を支払っている事実を踏まえるならば、それはさほど困難なことではないと指摘しました。そして、残された時間が殆どなくなっている中で、「被害者が生きているうちに解決を!今こそ謝り、つぐなうとき」と訴えました。
国会議員の挨拶・メッセージ
集会には、高良鉄美参院議員、笠井亮衆院議員、大石あき子衆院議員、本村伸子衆院議員にご参加いただき、それぞれご挨拶をいただきました。
高良議員は、国会質問で「日韓関係は重要」との外相答弁を引き出したが、そのためには植民地支配を終わらせることが必要であり、そのために徴用工問題のような問題を一つ一つ解決していくことが重要だと言われました。
笠井議員は、侵略と植民地支配下の人権侵害にどう向き合うか、強制動員問題解決は“待ったなし”と再確認されました。その上で、11.3日韓・韓日議連合同総会で、「歴史問題を解決するために、被害を訴える当事者の名誉と尊厳が回復されるように『日韓パートナーシップ宣言』の趣旨に基づいて、相互互恵の精神で共に努力する」ことを確認したことを紹介され、問題解決に向けともに頑張るとの決意を表明されました。
大石議員は、ご自身の過去の労働運動の経験から、問題の解決には謝罪と再発防止が必要であると指摘され、強制動員問題を解決していくに当たって被害者が求めていることに理解、共感を表明されました。
本村議員は、地元愛知での名古屋三菱女子勤労挺身隊訴訟に関わってこられた経緯を踏まえ、「あったことを無かったことにはさせない」、あくまで被害事実に向き合わせ、元女子勤労挺身隊ハルモニの人権回復のためにたたかうと言われました。
また、阿部知子衆院議員、紙智子参院議員、志位和夫衆院議員、赤嶺政賢衆院議員からは院内集会にあててメッセージが寄せられました。
今回の院内集会に少なからぬ議員が関心を寄られ、強制動員問題を解決すべきと考えておられることが明かになりました。
討論参加者の方がたの発言要旨
討論会の進行役も務めていただいた外村さんは、冒頭に「徴用工」という言い方は適当ではない、植民地朝鮮からは、国家総動員法第4条による動員だけではなく、法、行政命令に基づかないかたちで強制的に動員した事実があり、「強制動員」と言うべきだと指摘されました。強制か否かが議論されるが日本政府はそもそも調査すらしていない、また謝罪、賠償が求められているが、「韓国がうるさく言うから謝っておこうか」ではなく、歴史の事実を見て対応すべきことだと強調されました。さらに、これは労働問題、“安上がりで使い捨ての労働者を短期的に入れてしのげばいい”が戦時の労務動員であり、それは失敗に終わったのに、今また同じことをやっているとも指摘され、。労働運動団体も歴史について教訓にし、声を上げるべきだと呼びかけられました。
中沢けいさんは、ご自分が「K-BOOK振興会」の代表理事を務めていると言われ、日韓間の文化交流が発展している一方、日韓間には“寒冷前線が走っている”状況を指摘され、「大法院判決に従っていれば、こんなことになっていない」と怒りをこめて安倍政権の対応を批判されました。ご自身のお父さんが戦時中に16歳で40~50代の徴用工に仕事の“指揮”をしていた事実を明かされ、太平洋全域に広げて戦争をやった中で労働力不足を来したのは当然だった、と述べられました。そして、この問題に被害感情で対応するのではなく、話し合ってどう解決していくか、対話していくことが先ず必要だと訴えられました。
東郷さんは、「外交の要諦はタイミング」、この間の日韓関係はあまりに悪化していたが(徴用工問題だけではなく、国力のバランスの変化もある)、日韓ともに軌道修正の機運が出ている、「互譲の精神」で合意を図ってほしい、「今がチャンス」と述べられました。相手に51を渡し、自分は49で満足する、こういう外交官が出てきてほしい、この機を逃すことなくまとめることを期待していると言われました。
五味さんは、日韓で協議が重ねられ、「(解決案は)1つか2つに絞られた」と言われている、その一つが支援財団による「並存的債務引受」の方法で肩代わりする案であるが、まだ道筋は見えていない、と前置きされました。その上で、韓国側は原告を説得するためにも、日本側に「誠意(=真正、真情)ある呼応」を求めていると指摘。その「誠意ある呼応」とは何かが問われるが、それは金大中-小渕宣言(1998年)を再確認することではないか、と述べられました。岸田首相が1998年の精神を忘れないと表明するならば、それが最終案に反映され、交渉テーブルにのっていく、日本に求められていることは難しいことではない、との見通しを示されました。
鳥井さんは、外国人技能実習制度は現代の奴隷制であり、これには前史がある、強制連行の歴史が示す事実を直視しなくてはならない、と指摘されました。そして、「ビジネスと人権」に関する行動計画は「共生社会」を掲げ、人身売買・奴隷労働の根絶は民主主義の約束であるが、それを実現するためには、過去の植民地支配下での強制労働に対する反省と謝罪、清算が不可欠であり、それがないと次に進まない、と訴えられました。
最後に、平野さんは、大法院判決が出たとき判決全文を翻訳し掲載した新聞社は1社もなかった、日本国民の殆どは判決文を読んでいない、それなのにTVでは「韓国はうそつき」「韓国は約束を守らない」等と嫌韓が煽られた事実を指摘され、メディアの責任は大きいと述べられました。そして、世論が支持しなければ問題は解決しないが、このような状況が続けばまた同じことが繰り返されてしまうと警鐘を鳴らされました。その上で、原告のことを想像してみよう、李春植さんは当時17歳、高校生の男の子が親元を離れ、海を渡り、この地に来た姿を思い描いてほしい、その子に日本企業が何をしたか、この言葉が適切か分からないが、彼らがされたことを読んで感じたのは、いくら何でもかわいそうだ、ということ、こういう感情を持てないのか。国家利益の代弁者ではなく一人の人間として向き合う、そこから解決を導き出していかなければならない、と訴えられました。
集会では、上記のとおり、強制動員研究者、小説家、元外交官、ジャーナリスト、移住労働者の権利擁護に取り組む活動家とさまざまな立場から問題解決への思いを語っていただきました。これ自体が画期的なことでした。その中では、「今がチャンス」「この期を逃すべきではない」との認識を共有しつつ、しかし、あくまで被害当事者が納得できるものでなければ解決とはならないことが確認されました。強制動員という人権侵害の問題解決には、被害者の尊厳の回復を欠かすことはできません。それ抜きに政府間で「合意」を交わしても真の解決には至りません。そのためには先ず日本政府・企業が強制動員・強制労働の事実を認め、謝罪することが必要です。
ただ、岸田政権のこの問題ついて解決する姿勢に転じつつある中でも、自民党内には否定的な意見が根強く残り、世論も必ずしもポジティブな反応を示していません。これを超えて強制動員問題の解決を実現していくためには、さらに日韓市民が連携して強制動員問題解決を政府に働きかけるとともに、世論の支持を結集していく努力を継続していかなければなりません。
メディア掲載
・コラム「時言」 片手で拍手はできない(2022年12月05日 共同通信)
・「誠意ある呼応」の手本=伊藤智永 (2022年12月03日 毎日新聞)
・市民集会“労働問題の教訓に”(2022年12月01日 しんぶん赤旗)
・日本の市民団体、「強制動員、被害者が生きているうちに解決を」(2022年12月01日 ハンギョレ)
・日本市民団体「強制徴用被害者が生きているうちに謝罪・賠償を」(2022年12月01日 中央日報)
・日韓関係の修復「今がチャンス」 徴用工問題の解決求めて識者ら訴え(2022年11月30日 朝日新聞デジタル)
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