日本製鉄元徴用工裁判を支援する会の会報『ムジゲ通信』に掲載された11.30院内集会報告を、会の了解を得て、転載させていただきます


「被害者が生きているうちに解決を!ー今こそ誤り、つぐなうとき-」

1130院内集会の報告

 

 

 

                 日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 会報「ムジゲ通信」

 

 

 

 1130日、衆議院第1議員会館で、「強制動員問題解決と過去清算のための共同行動」(以下、「共同行動」)主催の院内集会「被害者が生きているうちに解決を!ー今こそ誤り、つぐなうとき-」が開催されました。

 

国会議員も多数参加

 集会には、国会開会中にもかかわらず、高良鉄美参院議員、笠井亮衆院議員、大石あきこ衆院議員、そして本村伸子衆院議員が参加されご挨拶をいただきました。また、メッセージを寄せてくださった議員も4名(阿部知子、紙智子、志位和夫、赤嶺政賢議員)いらっしゃいました。その他、多くの議員の秘書の方も参加されました。また、日韓のメディアも取材に駆けつけ、会場は一杯となりました。関心の高さがうかがわれます。

 集会冒頭に主催者を代表して「共同行動」の矢野秀喜さんから基調報告が行われました。矢野さんは「韓国政府は『片手で拍手はできない』と『誠意ある呼応』を求めている。韓国側が求めている呼応とは日本企業の謝罪と出資だ。当然のことだ。日鉄釜石裁判をはじめ、いくつもの強制労働事件が和解解決したが、日本政府は介入はしなかった。日本政府は、村山談話、日韓パートナーシップ宣言に止まらず、1989年に竹下首相も国会で謝罪を表明している。謝罪をすることはそんなに困難なことだろうか」と訴えました。

 

 

歴史の事実に向き合い対話を

 集会には、多彩な討論者の方が参加されました。進行役も兼ねた東京大学教授の外村大さんは「法的根拠もないまま動員された。言われたら行かざるをえない、お前の言うことなど聞く必要が無いというのが植民地の現実。日本政府は『強制はない』というが調査をしたのか。当事者に聞き取りもしないで、強制は無かったなどと言う資格はない」と提起。それを受けて、小説家で法政大学教授の中沢けいさんは「大法院判決に日本の企業が従えば、今回の日韓の緊張関係はなかった。一方では日韓の豊かな文化交流があり、その一方では対立があおられている。日本では外国人労働者の無権利状態が問題となっているが、それに気づかせてくれる相手がすぐ近くにいるに、なぜ対話し、解決しようとしないのか」と発言しました。

 

 

機会を失わず解決へ

 元外交官の東郷和彦さんは「外交の要諦はタイミング。過去の日韓関係はあまりに悪化していたが、軌道修正の機運が出ている。韓国は徴用工問題を突破口に関係修復に乗り出そうとしており、ぜひ合意に達してほしい。今がチャンスだ」と発言。東京新聞論説委員の五味洋治さんは「最近、韓国外務省の交渉担当者に取材する機会があったが、彼は原告を説得するために、日本政府の『誠意ある呼応』を期待すると言った。それは、今までやってきたこと(日韓パートナーシップ宣言など)をそのままやってくれればいいという意味。そう難しいことではない。企業も自分たちの会社が何をやったか薄々知っている。間組の社史にも朝鮮・中国から慣れない労働現場で多くの犠牲があったと書いている。そういう歴史を受け継ぐべきだ」とご自身の取材経験を踏まえて報告しました。

 

 

人を使い捨てにしない社会を

 「移住者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平さんからは、外国人労働者の労働問題に関わってきた立場から「外国人技能実習制度は『やめる自由のない、奴隷労働』だ」と指摘。「人を使い捨てにしない、させない。国も企業も本気で共生社会を作る気なら、歴史の直視と反省がないと、前へは進めない」と重要な提起をいただきました。

 最後に発言された、小説家の平野啓一郎さんは「相手の主張を知ることから始めるべきであるが、韓国大法院の判決文を読むことなく、韓国は嘘つき、約束を守らないと罵声をあびせている」と批判。「判決文にあるように騙されて過酷な現場に動員されたのであり、その被害者の痛み、その傷を癒したいという気持ちに共感する。これは被害者の人権問題であり、企業の活動にも過去の清算が必要だ」と訴えました。

 

 

被害者の納得いく解決を

 いずれの討論者も、強制労働問題の本質、原点に迫る問題提起、また、解決に向けた重要な課題を提起してくださいました。日韓の交渉が進む中、被害当事者が納得のいく解決を実現するために、国会議員とも連携し、これをいかに具体化していくかが緊急に私たちに求められています。

 集会の最後に「強制動員問題解決にむけての共同声明」が47団体、164個人の賛同で発表されました。「声明」は「過去、日本が朝鮮半島の人々に与えた苦痛と損害、その歴史事実を自覚し、反省するという立場に立てば、韓国側の求めに応じることは、困難なことではない」「強制動員被害者の声を受け止め、誠実に行動すべき」と提起しました。(山本)