2022.3.22院内集会報告


強制動員問題解決と過去清算のための共同行動事務局

矢野秀喜


 

 3月22日、強制動員問題解決と過去清算のための共同行動(以下、過去清算共同行動)として久し振りに院内集会を開催しました。コロナ禍の下で、会場参加+オンライン参加のハイブリッドでの開催となりました。

 テーマは、「韓国大統領選の結果と日韓関係のゆくえ-強制動員問題解決の道を探る」、タイムリーな企画でした。そのため戦後補償、強制動員問題に関心を持ち、運動を支えて来られた方々だけではなく、大統領選の結果、韓国、日韓関係はどう変わっていくのかを知りたいという方々も含め、100数十名の方が参加を申し込まれました(当日は、会場参加+オンライン参加で約100名)。また、大河原雅子衆議院議員、高良鉄美参議院議員に出席いただきました。

 集会では、「韓国大統領選の結果と今後の日韓関係の見通し」について李泳采さん(恵泉女学園大学教授)に、「強制動員問題の解決に向けて-過去の和解解決事例を手がかりに」については内田雅敏さん(弁護士)に報告していただきました。

 

〈大統領選の結果と今後の日韓関係〉

 李泳采さんは李在明候補-民主党の敗因、大接戦となった理由・背景、尹錫悦-保守政権の政策などについて以下のように報告(ポイントのみ)されました-

 

・なぜ「民主党」は敗北、政権を失ったか。その理由としては、文政権の下での経済政策の失敗、不動産政策の失敗、民主化闘争世代の“既得権益層”化への反発、等がある。これにより青年層の支持を失った。この流れを李在明候補も覆せなかった。

 

・ただ、大統領選で両候補の票差は、率で0.73%、大接戦となった。このような結果となった要因は、大統領選で20代、30代の若者、とりわけ女性が李候補を支持したから。20代有権者の47.8%が李候補に投票し、尹候補の得票率45.5%を上回った。特に女性は58.0%が李支持。30代でも両候補の得票は拮抗した。女性がこのような投票行動に出たのは、尹候補が「女性家族部」廃止などジェンダー平等推進に背を向ける政策を打ち出したからだ。また、尹候補が新自由主義路線の継続、高所得層優遇などの政策を採用することへの反発もあった。

 

・民主党は敗北したが、希望を未来につなぐことはできた。現に、大統領選後、選挙に敗北した「民主党」に多くの人が入党し、その数は11万人に上った(3.21現在)。うち約8割は女性であるという。この層が今後「民主党」を改革していく原動力になるだろう。

(注:他方、大統領選に候補者を立てながら、多くの女性支持者(と思われる)が尹錫悦候補を勝たせる訳にはいかないと李在明候補に投票し、選挙で大きく負けた正義党には、選挙後に12億ウォンものカンパが寄せられた)

 

・尹次期大統領は、対日関係では徴用工問題、貿易規制など懸案事項の「グランドバーゲン(一括処理)」を提起している。険悪化し、膠着状態となっている日韓関係が動く可能性はある。ただ現時点で予測するのは難しい。

 

 

〈強制動員問題の解決に向けて〉

 内田弁護士は、過去の中国人強制連行事件の和解対する政府、メディアの対応・反応に比しての、2018年大法院判決に対する日本政府・メディアの対応の異常さを指摘されました。植民地支配責任を認めなかった1965年の日韓基本条約から30年余が経過した1998年日韓パートナーシップ宣言で、この国はようやくそれを認めるに至った。しかし、今の政権はそれを逆流させている。日本政府が企業を縛っている。大法院判決を生かし解決策を探っていく努力を続けるほかない。

 李泳采さんの報告には幾人かの方から質問が出され、活発な議論が交わされました。

 

 また、出席された二人の国会議員から挨拶をいただきました。

 高良議員は、ウクライナ問題で、国会のロシア非難決議に棄権した理由、顛末を話されました。“ウクライナの次は尖閣、沖縄”、“中国が攻めてくる、沖縄、南西諸島の護りを固める”という議論が起こってくる、「ウクライナと共にある」というロシア非難決議はそれに利用される、棄権するしかなかった、と言われました。ノーモア沖縄戦、命どぅ宝の意義を高良議員は強調されました。

 

 車椅子で参加された大河原議員は、かつて戦後補償議連の強制動員問題部会に所属され、活動された時期のことを振り返られました。そして、事実を見すえれば、責任の所在、何をすべきかは自ずから見えて来る、未来に向けてこのような罪をどう償っていくか、いまわしい事実を風化させず記憶していく、世界に向けて今一度そのことを約束したい、と力強く決意を表明されました。

 お二人の議員のご挨拶で、この集会を開催した意義が再確認できたような思いがしました。

 韓国で大統領選の結果を受けて政権が移行する日は5月10日です。その時期には尹次期大統領の対日政策も見えて来るでしょう。それに合わせて、過去清算共同行動では5月に改めて院内集会を開催する予定です。その時には是非ご参加ください。

 

※こちらの記事は「ムジゲ通信」に掲載された原稿に追記したものです。

2022/4/21公開・4/22一部修正